日本中国考古学会 Japan Society For Chinese Archaeology 本文へジャンプ
 

 
松丸賞(日本中国考古学会奨励賞)

 
松丸賞(日本中国考古学会奨励賞)

【名称】松丸賞(日本中国考古学会奨励賞)
【趣旨】若手の中国考古学研究を奨励するため
【対象範囲】
  受賞の対象となるものは前年の『中国考古学』掲載論文(選考委員が特別に推薦する場合、他刊行物掲載論文あるいは単行本も含む)の著者で、受賞時点において40歳未満の者とする。また、対象とする論文は毎年1編とする。
【選考方法】
  受賞対象者とその対象雄論文の選考は選考委員会が実施する。
【賞の内容】
  受賞者には賞状並びに副賞として賞金を授与する。
【発表】
  選考委員会は選考結果を学会総会において報告し、大会期間中に授賞式を行う。

付記 日本中国考古学研究奨励賞に関わる費用は当面の間、松丸道雄 東京大学名誉教授から本学会に寄せられる奨励賞基金によるものとし、2011年大会に第1回授賞式を行う。
                               2011年11月27日制定

      

松丸賞(第9回 日本中国考古学奨励賞) 選考結果

奨励賞選考委員会は2019年9月に開催し、該当者なしであることを決定した。

松丸賞(第8回 日本中国考古学奨励賞) 選考結果

奨励賞選考委員会は2018年9月に開催し、該当者なしであることを決定した。

松丸賞(第7回 日本中国考古学奨励賞) 選考結果

奨励賞選考委員会は2017年9月22日に開催し、石谷慎氏に授与することを決定した。

【受賞者】石谷 慎

【受賞論文】「曾国青銅器の製作工人群とその系譜」『中国考古学』第16

【選考理由】

 本論文は、東周代曾国青銅器の属性分析による青銅器の型式編年を基に、文様表現と文様配置から製作技法の変遷による文様系譜を明らかにしている。さらに銘文による「作器者銘」と青銅器の型式や文様系譜との対応から大きく二つの工人群の復元に成功している。それは西周以来の伝統を引き継ぐ青銅器製作工人群と、楚の淅川・襄陽地区との関係で青銅器製作を行った工人群である。このように、いわゆる「楚系青銅器」においても地域差と時期差が存在するとともに、製作単位の違いが存在することが明らかとなった。そして、こうした現象が、国家間の複雑な交流関係から生まれたものであることを示している。石谷氏は、これまでも本誌において、戦国時代楚式鏡の文様論とりわけ印型による製作技法から型式分類や精緻な編年を行うなど、楚の青銅器に関する意欲的な論文を発表してきている。それらを総合的に評価して、奨励賞の授与に値するものであると選考委員会は判断した。

松丸賞(第6回 日本中国考古学奨励賞) 選考結果

奨励賞選考委員会は2016年9月23日に開催し、松本圭太氏に授与することを決定した。

【受賞者】松本圭太

【受賞論文】「ユーラシア草原地帯における青銅器様式とその境界」『中国考古学』第15号

【選考理由】

本論文は、紀元前2千年紀後半のモンゴリアを中心とした有?闘斧の型式学的分析と、これまで松本氏が行ってきた青銅剣や青銅刀子の編年を基に、これら青銅器全体の時空上の変化を明らかにしたものである。特に、それら青銅器の分布論から、地理的な境界を越える分布上の大きな変化が紀元前11世紀に認められることを明らかにした。また、その変化の背景としてユーラシア草原地帯の社会的な変化を予想した。しかし、そのような社会の実態あるいは社会的変化の原因などについては明らかにされていない。今後、そうした内容の解明がなされ、さらにユーラシア草原地帯全体の青銅器文化へ研究が拡大されるところを期待するところである。松本氏は、これまでも本誌他において、緻密な青銅器の型式分析など、ユーラシア草原地帯東部の青銅器に関する意欲的な論文を多数発表してきている。それらを総合的に評価して、奨励賞の授与に値するものであると選考委員会は判断した。


       松丸賞(第5回 日本中国考古学奨励賞) 選考結果

選考結果:奨励賞選考委員会は2015925日に開催し、菊地大樹氏に授与することを決定した。

【受賞者】菊地大樹

【選考理由】 「西周王朝の牧経営」『中国考古学』第14

【選考理由】
本論文は、動物考古学的分析と理化学的分析を融合させ、さらには古典籍や金文などを利用しながら、西周王朝の馬の飼養管理の実態を明らかにした点が、これまでにない研究成果である。何より少陵原西周墓地などの馬骨試料を直接分析するという、外国人研究者にとって難しい試料収集を精力的にこなした研究の構成力が評価される。さらには理化学的分析との学際共同研究の推進など、考古学の新たな研究方向の実践性にも目を見張るものがある。本論文は覚張隆史氏と劉呆運氏との共著であるが、菊地氏はこれまで本会誌である『中国考古学』に多くの優れた論文を投稿しており、かつ本格的な動物考古学研究を中国において実践している点、高い評価を与えることができる。それらを総合的に評価するとともに、今後の菊地氏のますますの研鑽を期待しつつ、奨励賞の授与に値するものであると選考委員会は判断した。

      松丸賞(第4回 日本中国考古学奨励賞)  選考結果

  奨励賞選考委員会は20149月に開催し、鈴木舞氏に授与することを決定した。
【受賞者】鈴木舞
【受賞論文】 「湖北盤龍城遺跡における青銅礼器の生産−青銅爵・鼎・?を中心に−」『中国考古学』第13号
【選考理由】
 本論文は、湖北盤龍城遺跡における青銅礼器のうち爵・鼎・?を中心に、鄭州におけるそれら青銅礼器との比較から、地方生産の可能性を明らかにしたものである。この内、爵は鄭州のものとの差違が認められ、特に文様の配置の原則や器身底部の笵線などにおける違いが顕著であるところから、地方生産の可能性が指摘される。鼎は、鄭州での生産品の可能性のものと、大型の鼎は地方生産の可能性が指摘された。一方、?は鄭州からの搬入ないしは鄭州からの完全な技術移転が想定されるとした。このように、殷代二里岡期における地方生産の可能性を、実物資料の詳細な観察から実証的に指摘したことに、論文の意義がある。また、盤龍城における地方生産の指摘から、単純な殷代の南方拠点としての盤龍城ではない、盤龍城を中心とする長江中流域の地域社会の主体性を言及した点が興味深い。しかしながら、そうした盤龍城での青銅礼器の生産がどの段階から始まり、その生産動機や生産システムがどのようなものであったなど、今後解明すべき点は多い。受賞者はこれまで鄭州の青銅礼器や殷墟期の青銅礼器の研究を進めており、こうした一連の研究から、殷代の青銅礼器生産システム全般と流通のあり方が解明されることが期待される。これらを総合的に評価して、奨励賞の授与に値するものであると選考委員会は判断した。近年日本の中国考古学では、青銅器製作技術から生産システムや青銅器の社会的意義を探る研究動向が生まれている。このような研究動向の中で、さらに氏の研究が進化することを期待するものである。


       松丸賞(第3回 日本中国考古学奨励賞)  選考結果
 

奨励賞選考委員会は20139月に開催し、中村亜希子氏に授与することを決定した。

【受賞者】中村亜希子

【選考理由】

 選考の対象となった『中国考古学』12号掲載の論文「瓦の東方伝播−楽浪瓦の再検討−」は、氏のこれまでの戦国から漢代における造瓦技術の変遷に関する知見を基に、楽浪土城の瓦を分析したものである。特に、軒丸瓦を中心に分析を行い、瓦当文様と造瓦技法の関係を明らかにした。その結果として、楽浪では漢代を通じ模骨技法が定着しなかったが、魏晋への王朝の交替を契機として模骨技法が取り入れられたことを明らかにした。さらに、楽浪付近での瓦葺き建物が、紀元前2世紀初頭に遡るという仮説を提出するに至っている。これは楽浪土城が楽浪郡治成立以降であるというこれまでの通説を塗り替えるものであり、衛満朝鮮の存在を考古学的に示すものである。このような新たな仮説は一層の検証が必用であり、今後の研鑽が期待される。また、氏はこれまでも本誌他において緻密な中国の造瓦技法の論文を多数発表してきている。それらを総合的に評価して、奨励賞の授与に値するものであると選考委員会は判断した

       松丸賞(第2回 日本中国考古学奨励賞)  選考結果
 

 奨励賞選考委員会は20129月に開催し、徳留大輔氏に授与することを決定した。

【受賞者】徳留大輔

【選考理由】
 選考の対象となった『中国考古学』11号掲載の論文「新石器時代・二里頭時代における都市・集落研究」は都市の生成を考える上で城址や環壕集落の動態に着目し、新石器時代から二里頭時代における都市・都市化の整理を試みたものである。その結果として、二里頭遺跡は新石器時代後期の都市と想定される城址と共通する面もあるが、王権の形成と維持の機能を持つ殷周時代の都市構造を持つ萌芽的段階に至っているとの興味深い評価を下している。今回はシンポジウムの進行上の制約があったためであろうが、研究動向のまとめという部分が多いことは否めない。ただし、氏はこれまでも本誌他において緻密な土器分析を基にした新石器時代から二里頭期にかけての社会分析に関する意欲的な論文を多数発表してきている。それらを総合的に評価して、奨励賞の授与に値するものであると選考委員会は判断した。近年中国考古学においては初期国家形成過程が研究上の重要な課題となっている中でさらに氏の研究の深化を期待するものである。



       松丸賞(第1回 日本中国考古学奨励賞)  選考結果
 
 奨励賞選考委員会は2011年7月、2回にわたり開催し、角道亮介氏に授与することを決定した。
【受賞者】角道亮介
【選考理由】
 青銅彝器の分布から西周王畿の範囲は比較的限られた範囲におさまり、かつ豊鎬、周原という周辺から隔絶した中心地とそれに従う無数の邑という基本構造からなるとする。また、近年調査の進んでいる周原の性格について、祖先祭祀の中心として機能しており、西周王都とされる豊鎬とは異なる性格を有していた可能性を提起している。なお分析不足の面があることは否めないが、西周時代の社会解明に向けた意欲的な論文と評価される。よって、さらに研究を深めれば西周時代社会の解明に大きく貢献してくれるであろうとの期待も込めて、奨励賞の授与に値するものであると選考委員会は判断した。
                             


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